アキュメンファンド・ジャクリーン・ノボグラッツさん

先日、東京財団主催のアキュメン・ファンドのCEOであるジャクリーンさんの講演会に参加しました。

ジャクリーンさんのアキュメンファンドの特徴は、「忍耐強い資本」というもの。

投資対象は、途上国にでの医療、衛星管理、福祉などの領域で100万人以上にソーシャルなメリットを生み出せる社会起業家へ投資をする。これは、一般的な投資家(VCなど)がリターンを期待する5〜7年という期間よりも、12年〜15年という長期間であり、ファイナンシャルリターンは1〜2パーセントという位の高くはないリターンだが、ソーシャルなリターンは非常に大規模で、これまでに40億ドル、4000万人以上にソーシャルリターンを生み出せる社会起業家たちに出資してきたらしい。
これこそ、「チェンジメーカー」そのものですね。

ソーシャルビジネスへの投資では、他には渡邊奈々さん著「チェンジメーカー」で一番初めに取り上げられていたアショカ財団のビル・ドライトンさんは、「社会起業家の父」と呼ばれる人で、ソーシャルリターンをファイナンシャルリターンを前提に生み出しながら世の中を変える「仕組み」を作る、偉大な存在。あの、グラミン銀行へも出資していたというから、この人がいなかったら、もしかしたらこれほどまでに世界に広まった「社会起業家」という世の中の潮流は起こらなかったのではないか、とすら思ってしまう。

今日本に圧倒的に足りていないのは、このソーシャルビジネスへの投資機関ですね。以前からこの日記で書いているように、アショカ、アキュメンのように、資本市場での成果をベースに成り立つソーシャルビジネスへのファイナンス面でのサポート機関が必須です。

日本での取り組みを知りたくて参加した、ソーシャルファイナンスカフェサロンについては、また後日書きます。
本当に勉強になりました。

☆ビル・ドライトンさん、プロジェクト・インパクトのデビットグリーン氏、渡邊奈々さんの講演「Everyone a changemaker」にも参加させていただく機会があった。そして今回のアキュメンファンドのジャクリーンさんの講演の参加できたが、気になったことがある。

ますます増えていく社会問題をビジネスの手法で解決していこうとする社会起業家の世界最高のロールモデルの方々がいらっしゃるのだが、その後のTVの放映があまりないと思わざるを得ない。ジャクリーンさんの場合には、NHKで5分弱のみだった。ビルドライトンさについては、それほど知らなかった。

社会的に最も重要な役割を果たしうる人々の存在を広めるのに最も有効な手段がTVではないだろうか。なのに、微々たるものでしかない。慶応大学の井上英之先生の「チェンジメーカー」という番組は本当にためになったけど、これを永続化する必要があるのでは。。。ネットでは英語サイトを探せば本当に多くの情報が拾えるが、ネットではまず主体的に探す前提情報が必要。だからこそ、TVの役割は大きい。(いずれTVはネットに取って代わられるだろうが、実はまだしばらくはTVの役割は非常に大きいと思う)
または、社会起業家の雑誌が絶対に必要。世界のチェンジメーカーを探して掲載。世界中に日本人はいるのだから、渡辺奈々さんの様に、世界中のそれらの人を探して雑誌化。
それを学校の英語の授業で、または経営学社会学の授業で。無料情報が多くて困っているメディア業界も、この分野は有料でも払う人がいるのでは。メディア自体の事業拡大に、この分野を大きく開拓すれば市場性が開けると思うのだけど。。
まず、マスメディアの報道する対象、方法を変える事が、最も重要な「チェンジ」だと思う。

では、それをどう変えていくか。
ひとつの重要なサンプルとして、アメリカにある、市民からの支援で成り立つジャーナリズム組織「パブリカ」の日本版を創るのはどうだろうか(http://www.propublica.org/ 厳しい経済情勢から大手新聞社がジャーナリストを解雇したり、取材活動を制限するなか、市民からの寄付で運営される非営利の報道機関「プロパプリカ」。プロパプリカはジャーナリズムのオスカーとも言われる「ピュリツァー賞」を受賞。)
日本には本格的なジャーナリズム組織がないかもしれないが、日本版パブリカ、若しくは独立系ジャーナリスト組織を成立させるための経済的基盤を成り立たせるため、「希少なニュースを買う」という発想で新地平を拓けないだろうか。

例えば、ジャーナリストたちが取材の行動を起こすのを支援するため、ニュース自体をオークション形式で値段別に商品化してお金を集め、一定額になったら、ジャーナリストは取材に行くということはできないだろうか。
このオークションシステム自体には、KIVAの発想を融合させたらどうだろう。

できないこともない気がしてくる。ということは、他にも得がたい情報源へのアクセスへの出資・売買形式も可能性があると思えてくる。

例えば、アフリカ・ロシア・南米などへのBOPビジネス進出を考えている製造業の企業の「生」で「現場感」あるの市場調査、北欧の高度福祉・教育サービスの市場調査、日本の多くの家電メーカーが苦戦している「ハード」商売のソフト化への転換として、シリコンバレーの中小企業の可能性リサーチなど。。

これらは、もちろんグローバルな戦略系コンサルティング会社はずっと以前から行っているはずなので、上記の目的は、コンサルティング会社へのコスト面でのアクセス機会のなさを克服するため、できるだけ安価に、必要情報をピンポイントに「小分け」(情報のマイクロ販売」)して、当事者同士で値段交渉できるようなKIVA形式が望ましいと思うのだが、どうだろうか。特に、英語サイトを作りネット情報でさえも監視下にある途上国の政府内部開示情報は非常に高く入札されるだろう。ジャーナリズムと経済性の両立、これはチェンジメーカーになりえないか。

今後、ビジネススクールで行動へのきっかけが創れるかもしれない。